いつも、ずっと、あなたと長寿リン.jp

ホーム > ドクターに学ぶ透析 > 高齢患者さんの透析導入

ドクターに学ぶ透析

「透析とは何?」「どんな治療をするの?」「普段注意が必要なことは?」。
透析患者さんやこれから透析を始める方は、さまざまな疑問や不安を感じることがあるでしょう。
そこでより良い透析生活を支えるために、治療や気を付けたい症状、食事、運動など、透析に関する知識をドクターに学びます。

高齢患者さんの透析導入

笠井 健司 先生富士市立中央病院 副院長

透析導入年齢の高齢化が進み、現在新たに透析を導入される患者さんの約4割(40.5%)が75歳以上の後期高齢者の方です(日本透析学会「わが国の慢性透析療法の現況2016年12月31日現在」より)。高齢患者さんならではの、透析導入や治療のポイントをはじめ、心身ともに長く健康を維持する方法について、笠井健司先生にお話をうかがいました。

高齢患者さんの透析療法の特徴

― 後期高齢者の患者さんと若い患者さんで、治療において異なる点はありますか。

 高齢の患者さんは、年齢が上がるほど、多くの病気を経験しておられます。中にはたいへんな手術を何度も受けられた方や、腎臓病以外にもいくつかの慢性的な病気を持っている方もおいでになります。過去の病歴や現在診療中の病気を把握したうえで、治療を行うことが大切です。また、ご高齢の患者さんは長い歴史を刻まれてきた分、価値観もライフスタイルもお一人おひとりずいぶん異なります。ご本人やご家族の意向をよくお聴きしたうえで、医療者の判断を加え、治療法を選んでいきます。

― 高齢患者さんはどのような治療を選択される傾向にありますか。

 大きく分けて「血液透析」「腹膜透析」の2種類の透析療法と腎移植がありますが、高齢者では血液透析を選ばれる患者さんが多い傾向にあります。これは治療内容というよりも、透析に関わるすべてを病院やクリニックで医療者が担うという安心感によるところが大きいかもしれません。また、送迎サービスが利用できる場合には、通院も手軽になるため、さらにその傾向が強まります。日本は海外に比べ血液透析の患者さんがとても多いのが現状です。しかし、今年になって医療制度が変わり、さまざまな医療機器も使いやすくなって、腹膜透析を選択される患者さんが増え始めているとお聞きしています。これから腹膜透析のよさが見直される時代が来るかもしれません。

健康を長く維持することが大切

― 高齢の患者さんが透析前から気をつけることはありますか。

 慢性腎臓病(CKD)の患者さんは食塩やたんぱく質の制限などの食事療法について指導されます。ところがたんぱく質を減らそうとするとカロリー摂取量も減ってしまい、痩せていくことがあります。透析を恐れるあまり、栄養失調になってしまってはいけません。特に高齢の患者さんはたんぱく制限が筋肉の減少につながりやすく注意が必要です。

―「サルコペニア」や「フレイル」という言葉を聞いたことがありますが。

 最近この2つの言葉をよく耳にされる方も多いと思います。サルコペニアとは、加齢や病気によって筋肉量や筋力、身体機能が低下することをいいます。フレイルとは、サルコペニアなどを経て生活機能が全般的に低下した状態をいいます。進行すると日常生活に支障をきたして、転倒・骨折などから要介護状態になるリスクが高まります。ただ、こうした症状は医療者や家族などの適切な関わりによってもとの元気な状態に戻る可能性が含まれています。できるだけ長く自分の力で動くことができる状態を保つためにも、周囲の協力を得ながら、栄養のバランスに配慮し運動に取り組むことをおすすめします。

― どのような運動をすると良いでしょうか。

 一番取り組みやすい運動として、ウォーキングから始めるのがよいでしょう。日常的に無理をせず続けられるペースで体を動かしましょう。最近では透析患者さんを含めCKDの患者さんの運動の大切さが注目され、「ガイドライン」もつくられています。心臓病などをお持ちの患者さんはいきなり運動するのが危険な場合もありますので、まず主治医にご相談ください。透析を始める前の取り組みが、透析を始めたあとにまで影響するといわれています。食事療法と運動療法をセットで取り組んでいくことが大切です。

できないことにとらわれない

― 高齢の患者さんにとって、透析療法は大変ではありませんか。

 透析療法というと大変だという印象をお持ちになると思いますが、世界でトップクラスの医療を日本ではだれでも身近な医療機関で受けることができるのはすごいことです。透析療法を受け始めると、体調の変化を見逃さないよう定期的な検査も行われます。透析患者さんには手厚い医療が提供されているのです。また、透析施設には親切なスタッフが多いように思います。最近は一人住まいの高齢者が増え、自宅にこもりがちという話もよく聞きますが、透析クリニックでの患者さん同士の出会いや、スタッフとのコミュニケーションにほっとする患者さんやご家族もおいでになるのではないでしょうか。

― コミュニケーションによって、心も健やかに保つことができるということですね。

 はい。そして、もうひとつ大切なことは、「できないことにとらわれない」ということです。療養生活をしているとできないことばかりにとらわれて、できるのにしていないことがだんだん増えていきます。それでも、中高年の患者さんの中には、透析をしながら仕事を続けている方はもちろん、ダイビングやパラグライダーを楽しむ方もおいでになります。よりご高齢の患者さんでも、おいしいお芋や落花生作りに汗を流したり、旅行を楽しまれたり、ご夫婦で仲良く過ごしている方もおいでになります。透析を続けながらでもできることは必ずあります。「お孫さんを喜ばせたい」、「友達を笑顔にしたい」、「オリンピックで応援したい」…どんなささやかなことでもできることを見つけて、挑戦し、実現していただきたい。私たちは、ぜひそんな皆さんの挑戦を応援していきたいと思っています。

患者さんへのメッセージ

 透析療法を受けていることで、一歩引いてしまったり、ハンディキャップを感じる必要はありません。治療は必要ですが、透析という方法を用いることで、それまでとほとんど変わらない生活を送る患者さんもたくさんいらっしゃいます。透析を特別なことと捉えず、元気で幸せに長生きするための一つの方法と考えていただきたいと思います。

お話を伺った先生

笠井 健司 先生

富士市立中央病院 副院長

病院のご紹介

病院名 富士市立中央病院
所在地 静岡県富士市高島町50番地
TEL.0545-52-1131(代表)
診療科目 糖尿病・内分泌・血液内科、呼吸器内科、消化器内科、腎臓内科、神経内科、精神神経科、循環器内科、心臓血管外科、小児科、外科、整形外科、形成外科、脳神経外科、皮膚科、泌尿器科、産婦人科、眼科、耳鼻咽喉科、放射線科、麻酔科、病理診断科、歯科口腔外科、手術管理科
Webサイト http://byoin.city.fuji.shizuoka.jp/

富士市立中央病院 外観

    • 「在宅血液透析」を知っていますか
    • 透析医療を支える地域包括ケアシステム
    • 透析病院の選び方 〜長いおつきあいができる施設と出会うために〜
    • 高齢患者さんの透析導入
    • 知っておきたい「シャント」のこと
    • 透析患者さんの「かゆみ」のケア
    • 透析患者さんの「心」の健康
    • 透析導入後、食事はどう変わる
    • 透析をめぐる「お金」と「制度」
    • 腹膜透析の実際と心臓病予防
    • 透析でいきいき長生き
    • 透析当日の過ごし方
    • 知っておきたい合併症
    • 腹膜透析と血液透析
PP-FOS-JP-0078-07-11

このページのトップへ

Copyright c 2009 Bayer Yakuhin, Ltd. All rights Reserved.