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ドクターに学ぶ透析

「透析とは何?」「どんな治療をするの?」「普段注意が必要なことは?」。
透析患者さんやこれから透析を始める方は、さまざまな疑問や不安を感じることがあるでしょう。
そこでより良い透析生活を支えるために、治療や気を付けたい症状、食事、運動など、透析に関する知識をドクターに学びます。

自分に合った腎代替療法を選ぶ時代へ

森本 耕吉 先生慶應義塾大学病院

「SDM」を知っていますか?SDMとはShared decision makingの略で、「共同意思決定」の意。患者さんと家族、医療者がよく話し合った上で最適な治療法を決めることを言います。現在、日本では腎不全が進行した患者さんのほとんどが血液透析を受けています。今、注目されているSDMは、患者さんが血液透析以外の療法を含めて選択できるようにすべきだ、という考え方です。これからの腎代替療法の選択について、森本耕吉先生にお話をうかがいました。

腎移植と人工透析治療では何が違う?

― 腎代替療法の一つ、腎移植の現在の状況を教えてください。

 新たに透析治療に入る方が1年間で約4万人(日本透析医学会「わが国の慢性透析療法の現況2016年12月31日現在」より)おられるのに対し、腎移植の実施件数は年間約1700件です(日本移植学会「ファクトブック2017」より)。腎移植にはご家族から片方の腎臓を提供していただく「生体腎移植」、心臓や脳の病気で亡くなられた方から腎臓をいただく「献体腎移植」がありますが、どちらも安全性を重視して厳密な制約のもとに実施されています。腎移植を希望される方は多いのですが、日本では常にドナーが不足しており、実際に移植を受けられるのはごく少数に留まっているのが現状です。

― 腎移植が透析と比べて優れている点はどのようなところですか。

 透析でできることは、腎機能低下によって体内にたまった毒素と、余分な水、電解質を血液中から取り除くことが全てです。腎臓はそれ以外にも血圧の調節などの機能を担っています。また、透析では本来腎臓から排泄される毒素のうち「大きな分子」や「たんぱく結合率の高い分子」の除去には限界があります。その点、移植した腎臓はこうした透析では取り除かれにくい毒素も排泄することができますし、他の腎臓の機能も果たします。ただ、移植を受けても保存期のステージ3程度に戻るだけですので食事療法を継続しなければなりませんし、片腎だけの状態なのでリンを排出する能力などは不十分。心不全などの病気についても油断はできません。また、糖尿病、IgA腎症、腎硬化症などの原因疾患が腎移植により治るわけではないので、せっかく移植した腎臓の機能も再び低下してしまう場合があります。何より一生に渡って免疫抑制剤を服用しなければならず、感染症やがんの発症リスクが上がりやすいといった問題もあります。腎移植は腎代替療法の中では最も優れた治療法ですが、マイナス面が何もないというわけではありません。

腎代替療法をきちんと「選択」できる医療体制へ

― 各々に最適な腎代替療法を患者さんと医療者が共に考えて選ぶという機運が高まっています。

 いま注目されているキーワードが「SDM(シェアード・デシジョン・メイキング:医療者と患者の共同意思決定)」です。この言葉は1983年に米国で提唱されましたが、日本ではその後も伝統的な「パターナリズム(Paternalism、父権主義)」、つまり医師が治療法を決め患者さんは従うのみ、という時代が続きました。1990年代以降マスメディアやインターネット等を通じて患者さんがある程度自由に医療情報にアクセスできるようになった背景もあり、「インフォームド・コンセント(説明と同意、以下「IC」)」が根づきました。しかし、情報提供はされるものの高度な専門知識を要する判断が患者さんに委ねられてしまう難しさもありました。SDMは本人、家族、医療者が繰り返し面談を行いよく話し合った上で、患者さん個々に最適な治療法を決めようという考え方です。患者さん向けに作られた冊子*1では、患者さんと5回の面談を行うことが想定されています。

腹膜透析を受けられる施設が増える

― 日本の腎代替療法を必要とされる方の多くは血液透析を受けています。
SDMの導入で変わるのでしょうか。

 治療効果の上では腎移植が最も優れているものの、ドナー不足の状況が大きく変わるとは考えられないので、今後も透析療法が中心になると考えられます。しかし現在、透析患者さんのうち腹膜透析を受けている方は3%(日本透析医学会「わが国の慢性透析療法の現況2016年12月31日現在」より)と諸外国に比べて非常に少なく、しかも地域によってばらつきがあり、患者さんに腎代替療法の選択肢が十分に与えられていない地域があるのが実態です。国の医療全体が在宅医療を重視する方向に進んでいますので、腎代替医療でも患者さんに療法選択の機会をもっていただき、在宅医療を望む方には在宅でできる腹膜透析を提供する―――というのがこれからの透析医療であり、その準備が進められているところです。私ども大学病院も関連医療機関や地域の透析施設で腹膜透析のトレーニングや診療のバックアップなどを担っています。近い将来、腎移植を含む3つの選択肢がきちんと患者さんに説明され、患者さんと医療者が共に考えて治療法を選び、どの医療機関でも血液透析と腹膜透析のどちらでも受けられる状況を作ることを目指しています。
 一方、患者さん自身がどう前向きに考えても透析治療を受ける意味を見出せない場合や、ご本人に判断力が全くない場合、「第4の選択肢」として透析を受けない(透析非導入)という選択肢も保たれなければなりません。ただ、非導入を選んだ患者さんが最期まで苦しまず、穏やかに過ごせるようなケアの方法はまだ確立されていないので、今後の課題です。

患者さんへのメッセージ

 腎代替療法はいずれも一長一短があります。療法選択の際に「針を刺すのがいやだ」「通院が大変」等と、マイナス点ばかりを上げて考えると前向きな気持ちにはなりにくいものです。私がお勧めしたいのは「プラス面に着目すること」。たとえば血液透析なら「通院日以外の日は自由」、腹膜透析なら「通院は月1回で済む」、腎移植なら「免疫抑制剤をきちんと飲んでいれば、よい状態で長生きできる」など、「これを選んだらこれができる」というように考えてご自分に合った療法を選んでいただきたいと思います。

*1 腎臓SDM推進協会「腎臓病 あなたに合った治療法を選ぶために」同協会ホームページよりダウンロードできます→http://www.ckdsdm.jp/index.html

お話を伺った先生

森本 耕吉 先生

慶應義塾大学病院

病院のご紹介

病院名 慶應義塾大学病院
所在地 東京都新宿区信濃町35
TEL.03-3353-1211(代表)
診療科目 呼吸器内科、循環器内科、消化器内科、腎臓・内分泌・代謝内科、神経内科、血液内科、リウマチ・膠原病内科、一般・消化器外科、呼吸器外科、心臓血管外科、脳神経外科、小児外科、整形外科、リハビリテーション科、形成外科、小児科、産科、婦人科、眼科、皮膚科、泌尿器科、耳鼻咽喉科、精神・神経科、放射線治療科、放射線診断科、麻酔科、救急科、歯科・口腔外科、総合診療科、臨床検査科、病理診断科、メモリークリニック、セカンドオピニオン、感染症外来
Webサイト http://www.hosp.keio.ac.jp/
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