透析患者さんのリハビリテーション

緒方 浩顕 先生
緒方 浩顕 先生 昭和大学横浜市北部病院

最近、一部の透析施設では透析患者さんのリハビリテーションとして運動療法が行われています。長年にわたって透析を受けている患者さんにとっては「腎臓が悪い患者では運動は制限されているはずでは…?」という違和感があるかもしれません。しかし、現在、保存期の慢性腎臓病患者さんのみならず透析患者さんにおいても運動の効果が注目されています。リハビリテ-ションの効用や安全に行うための留意点など、緒方浩顕先生に教えていただきました。

リハビリテ-ションの目的と効果

― 透析患者さんにとってリハビリテ-ション(運動療法)にはどのような効果が期待されるのですか。

 そもそも「リハビリテーション」という語には「低下した機能を再び戻す」という意味があります。血液透析の場合、週に3日はほとんど体を動かさずに過ごすため筋肉量や心肺機能が低下しがちです。歩行スピードや握力は筋肉の量や運動能の目安になりますが、透析患者さんの中でもこれらが充分に保たれている方は転倒や骨折を起こしにくく、元気で長生きすることができるのです。

 一方、近年は透析導入される患者さんの高齢化が進み、腎不全だけでなく糖尿病、脳卒中、狭心症などの合併症があるために、身体機能が低下するリスクをもつ透析患者さんが増えています。ですから、リハビリテ-ションは比較的若い透析患者さんには身体機能を維持するために、高齢で合併症がある患者さんにはADL(日常生活動作)を向上させるためにと、患者さんによって目的は異なります。ただ、皆さん共通に運動することで前向きな気持ちになったり、食欲が向上したりする効果があるものです。ドライウェイトを増やしたい透析患者さんには運動療法をお勧めしたいですね。

― 特に透析前や透析中にベッドの上でリハビリテ-ションを行うと、透析自体にもよい影響がありますか?

 血管石灰化の原因となるリンの多くは筋肉中に存在します。そこで、透析直前や透析中に運動療法を行うと、透析によるリンを除去する効果が高まる可能性が示されています。また透析中に足がつる、血圧が低下するといった症状が起こりにくくなるという報告もあります。

緒方 浩顕 先生

透析施設で行われるリハビリテ-ションとは

― 血液透析の施設ではどのようにリハビリテ-ションが行われるのか教えてください。

 一例として当院の事例を紹介します。当院ではエルゴメーターという運動機器を使い、透析中に自転車こぎ運動に取り組んでいただいています。全身状態や合併症によってはリハビリテーションができない方もいらっしゃいますので、事前に循環器科やリハビリテーション科の医師がリハビリテーションを行なって良いかどうかを判断し、日常生活の状況、筋肉量などを総合的に判断してその方にあった運動の強度を決めていきます。腰痛症などの症状がある方の場合は整形外科医にも相談します。

 実際には、まず理学療法士の方の指導の元、ストレッチやゴムバンド、ボールを用いた運動を行います。身体をほぐした後、ベッドの上で寝た姿勢のまま自転車こぎ運動を行います。ペダルの重さを変えるなど、患者さんの体力に合わせて少しずつ負荷を上げていくことで、心肺能力が高まっていきます。運動強度はずっと一定では意味がなく、医師の指導の下で常に修正していくことによりリハビリテーションとしての効果が得られるのです。

 有酸素運動である自転車こぎ運動に対して、筋力を維持するためのリハビリテーションもあります。これは透析ではない時に無理のない範囲で行う筋肉トレーニングが有効です。

透析がない日のリハビリも大切

― 透析患者さんのリハビリテーションを実施している透析施設は広がってきているのでしょうか。

 透析患者さんへのリハビリテーションはまだ先進的な取り組みで、大学病院などの大病院や、一部の透析クリニックでしか行われていません。しかし、透析のない日はご自身でリハビリテーションに取り組むことをお勧めします。家の中で柔軟体操やストレッチをしたり、ジムに通える方はジムで筋力トレーニングを行うのもよいでしょう。もちろん、透析施設でリハビリテ-ションを受けている方であっても透析がない日に体を動かすことは重要です。

 ただし、高齢の方が運動でけがをすると、却って日常生活への支障が大きくなりますので、安全に行うことが第一です。どの程度の運動から始めるか、必ず医師に相談していただきたいと思います。ジムに通っている方はトレーナーにシャントがあることを伝え、シャントを傷つけないように留意することも大切です。なお、透析日当日は血圧が下がりやすいので運動する際には十分に注意し、無理はしないことが大切です。

緒方 浩顕 先生

患者さんへのメッセージ

 人間が元気で長生きするために、身体機能の維持は非常に重要なテーマです。透析患者さんの場合、透析施設に通える体力を維持することは必須です。もともと運動を好まない方もいらっしゃいますが、運動には明るく前向きな気持ちにする効果もあります。ご家族の一押しでやる気になることもありますので、主治医と相談しながら、適切な運動により身体機能を維持していきましょう。透析治療を受けているからと言って、できないことはありません。「自分は透析患者だから…」などと思わず、患者さん自身が今後どう生きたいのか、何をしたいのかを考え、その実現のために頑張っていただきたいと思います。

緒方 浩顕 先生

お話を伺った先生

昭和大学横浜市北部病院
緒方 浩顕 先生

病院のご紹介

病院名 昭和大学横浜市北部病院
所在地 神奈川県横浜市都筑区茅ヶ崎中央35-1
TEL.045-949-7000(代表)
診療科目 呼吸器センター、消化器センター、循環器センター、こどもセンター、メンタルケアセンター、救急センター、内科、皮膚科、放射線科、臨床病理診断科、外科、脳神経外科、整形外科、産婦人科、泌尿器科、眼科、耳鼻咽喉科、麻酔科、リハビリテーション科、緩和医療科、歯科・歯科口腔外科
Webサイト http://www.showa-u.ac.jp/SUHY/index.html