心も健康でいるために
EASEプログラムを活用することで
自己管理がしやすくなる
この連載も今回で最終回となります。
岡美智代先生が開発されたEASEプログラムは透析を受けている方をはじめ慢性疾患を持っている方の行動変容を支援することを目的にしたプログラムです。
EASEは日本語で「気軽」という意味があり、患者さんがセルフマネジメントできるよう医療従事者が手助けするプログラムという意味もあります。
最終回は生きがい連結法について解説をお願いしました。
生きがい連結法とは本人の生きがいや何を大切にしているかを明らかにして、そのためには何をやらなければならないか、という行動に結びつけていく方法です。
例えば透析を受けているNさんの場合は、自分が経営している工場で働いている息子がまだ半人前なので、何とか一人前になって自分の工場を継いでほしいと思っています。息子が一人前になるまで元気でいるためには、がんばって食事制限や水分制限するという行動に結びつけていくわけです。
これは透析を受けている方の生きがいを明確にすることにより、対象者の持つエンパワメントを高めることにもつながります。エンパワメントとは対象者に裁量を与えることで、本人が自主的にやっていくのだという気持ちの持ちようのことです。
方法としては、自分の決めた最終到達目標(ステイトメント)を忘れないように紙に書いて目にみえるような場所に貼るか、手帳に書き留めておくなどして、自分が何のために食事制限や水分制限をしているのか、つねに確認できるようにしていくことが大切です。
3回にわたってご紹介したEASEプログラムの特徴は、介入者側が誘導するのではなく、透析を受けている方自身に決めていただく点にあります。また、一つの技法だけでなく複数の技法を組み合わせることでより効果が高まります。今回でこの連載も終了しますが、少しでもお役に立てたてましたでしょうか。ありがとうございました。
青柳正明さん(透析歴5年半) 西片貝クリニック腎友会
私が人工透析をするようになったのは、糖尿病性腎症を発病したからです。長く暴飲暴食を続けていたので、飲食の管理には苦労しました。特に夜食のコーヒーとトーストがほしくなるのです。そこで、この二つをやめることができたら自分にご褒美を与える「行動強化法」を行いました。他の人に公言したこともあり、目標はさほど苦もなく達成。以前からほしかったピアニスト辻井伸行さんのCDを購入しました。一つの目標をクリアできたことで、今は「生きがい連結法」にも興味を持ち始めています。活発に体を動かすことに喜びを感じているので、そのことと結びつく生きがいを模索中です。
看護師として病院勤務の後、筑波大学大学院で医学博士取得。
山形大学・北里大学助教授として看護教育に携わる。
現在、群馬大学大学院保健学研究科教授。
看護師の経験を活かしEASEプログラムを開発。
現在はその普及に向けたマニュアルの制作にも取り組む。
ホームページにてEASEプログラムについての相談を行っている。
http://oka.dept.health.gunma-u.ac.jp/~michiyo/
掲載2013年 vol.12
透析を受けている方に役立つEASE(イーズ)プログラムとは? 第3回
掲載2011年9月 秋 vol.08
透析を受けている方に役立つEASE(イーズ)プログラムとは? 第2回
掲載2011年7月 夏 vol.07
透析を受けている方に役立つEASE(イーズ)プログラムとは? 第1回
掲載2011年3月 春 vol.06
掲載2010年8月 夏 vol.04
第2回 精神科医が腎臓病の診療にあたるサイコネフロロジーの意味
掲載2010年4月 春 vol.03
掲載2009年12月 冬 vol.02