透析を受けながら活躍する人々

掲載:2015年 vol.19

廣川 五司(いつし)さん
最近は撮影を少し休み、トイプードルの愛犬・ナナちゃんと過ごすことが多いという廣川さん。
近場の旅行をはじめ、銀座への散歩などに一緒に出かけ、その愛くるしい表情にご夫妻で癒されているそう。
毎日の食事など、身近で支えてくれる奥様にも感謝の思いがあふれる。

ただ悩んでいるだけの時間はもったいない。
これからもっといろんな所へ出かけて、撮り続けたい。

廣川 五司いつしさん

アマチュア写真家

1940年、東京都生まれ。高校卒業後、新潟県長岡市の背広の卸会社に就職し、23歳の時に東京支店へ転勤。29歳で親類が営む呉服店に転職。1978年に糖尿病と診断され、1997年に血液透析を導入。退職後は精力的に撮影に出かけ、2010年には写真集『自然の彩り』(北斗社)を出版。2013年に心不全拡張型心筋症、2014年に肺炎を経て、現在は腰痛の治療を目指す。今後はさらに精力的に写真活動をしていくのが夢。

透析を続けながら、全国の風景を撮影。
古希に出版した写真集は、一生の記念です。

廣川 五司さん
廣川 五司さん

大好きな写真の話に、思わず笑顔がこぼれる。行きたい場所は全国に。

 最初のカメラを買ったのは、就職したての18歳の時です。キャノンの35ミリレンズでした。当時はまだカメラは高価なものだったので、手に入れた時はうれしかったですね。実は私が高校生の時に撮ったという古い写真も残っているのですが、そのことはなぜか記憶にないんです(笑)。でもその頃からカメラが好きで、興味があったんでしょうね。
 仕事ではずっと、衣装に関わってきました。最初に勤めたのは長岡の背広の卸会社で、23歳の時に東京支店へ転勤しました。営業マンとして、洋服の生地見本を持って全国へ出かけていきましたよ。大変でしたが、やりがいはありましたね。そして29歳の時、日本橋で呉服屋を営む叔父から「店を手伝ってほしい」と言われて転職しました。ここでも営業担当でしたが、写真が趣味だと言うと、呉服のDM撮影なども頼まれて。着物や帯を衣桁にかけて、ライトを工夫して…けっこう大がかりな撮影をしていましたね。あと、仕事ではありませんが、結婚式の撮影も6、7回したことがあります。
 写真が一気に楽しくなったきっかけは、富士山を撮影したことでした。素晴らしい風景に感動してしまって。1995年から2年間は、四輪駆動車やテントを買って、一年中富士山に行っていました。今でも変わりませんが、私は山梨県側から撮影するのが好きなんです。特に三つ峠(山梨県の3つの市町の境に位置する山)から撮る夕暮れの富士山は格別ですよ。どの季節も素晴らしくて、いろんな姿を撮りたいと思うんです。例えば冬が近づいて「初雪が降った」と聞けば、居ても立ってもいられずに、すぐに出かけて行きました。本当に、何度行っても飽きませんね。
 私が撮る写真は、いつしか自然の風景ばかりになりました。人物や建物は、趣味で撮ることはありませんね。富士山だけでなく、軽井沢や北海道、青森など行動範囲も全国へと広がりました。しかし、ちょうど写真に熱中しだした1995年、体のむくみが気になりだし、日に日に体調が悪くなってきたのです。この年に家族でハワイに出かけましたが、飛行機の気圧や現地での移動で、大変つらかったのを覚えています。私はもともと遺伝的な要因で腎臓が弱く、さらに1978年には糖尿病と診断されていました。知らないうちに、ずいぶん負担をかけてしまっていたのでしょう。1996年には病院で透析をすすめられました。でも、趣味や食事などの制限が嫌で、すんなりとは受け入れられませんでした。そうしている間にも、さらに体調は悪くなり、ついに翌年、透析導入の手術を受けることを決めました。
『自然の彩り』(北斗社)

『自然の彩り』(北斗社)
廣川さんが撮影した写真から、70点を厳選・収録した写真集第1弾。時間をかけて選りすぐったという写真は、どれもお気に入りばかり。

 手術後は、透析を続けながら2000年まで働きました。退職後は再び写真に熱中し、一時「自然讃歌写真連盟」にも入会していました。2010年には写真集『自然の彩り』を出版。この本は私の古希を記念したもので、ページ数も全70ページにしました。収録している写真は、透析導入前よりも、後に撮ったものの方が多いんですよ。完成本を見た時は、感慨深かったですね。
 私は今、腰痛を抱えていて、手術について医師と相談しているところです。「手術をすることで、この先の人生がどれだけ良くなるだろう」と何度も考えましたが、何より私には写真を撮り続けたいという夢があります。友人は「写真集第2弾を出そうよ」と言ってくれますし、私もこれからもっといろんな場所へ行ってみたい。ただ悩んでいるだけの時間は、もったいないと思うようになりました。腰痛を克服して、また大好きな風景を追いかける日が、今からとても楽しみです。

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