透析を受けながら活躍する人々

掲載:2016年 vol.24

大迫 薫さん
これまでの経験を活かし、患者さんと医療者など、人と良い関係を築く「伝え方」についてセミナーを開催したいと考えているとか。新しいことにどんどん挑戦し楽しむポジティブな姿勢が印象的。「それから個人的なことですが、彼氏を募集中です(笑)。心がやさしくて、理解力のある方がいいですね」。

たとえ身体を使うことは難しくても、
自分の精神を尽くして誰かの役に立ちたい。

大迫 薫さん

産業カウンセラー・全腎協こころの電話相談担当

大迫 薫さん
1963年、神奈川県横浜市生まれ。31歳の時に当時勤めていた会社の健康診断で、血尿を指摘される。33歳で糸球体腎炎により血液透析を導入。その後、透析中に読んだ本に大きな影響を受け、心理カウンセラーを目指す。40歳で大学に入学し、認定心理士の資格を取得。卒業後、産業カウンセラー養成講座を修了。現在は、産業カウンセラーとして企業で働く人たちの心をサポートしながら、女性限定で個人のカウンセリングも行う。2015年より、在宅透析を開始。

透析中に出合った本がきっかけで、
“天職”とも言える心理カウンセラーに。

大迫 薫さん

カウンセリングにおいて、「私はあくまで自己解決をサポートする役割」と話す大迫さん。
「“気持ちが軽くなりました”と言われるとうれしいし、やりがいを感じます」。

Oruka’s room
(オルカズルーム)

http://orukaroom.com/

大迫さんが主宰する、女性専用のメンタルカウンセリングルーム。
仕事・家族・透析についてなど、さまざまな個人の悩みを解消するためのサポートを行う。

orukaの日常

http://orukas.jugem.jp/

大迫さんが、透析のことや自分史、毎日の出来事などを綴るブログ。
優しい視点と、豊かな言葉に、読むほどに勇気付けられる。

 私は現在、産業カウンセラーとして活動しています。産業カウンセラーとは、企業などで働く人たちが抱える問題を解決できるよう、心理学的視点からサポートする職業です。私がこの仕事に就き、今も続けているのは、透析を導入したことと大きな関係があります。
 31歳の時、当時勤めていた会社の健康診断で、血尿を指摘されました。でも、あまり深刻に考えていなくて、そのままになっていたんです。するとその後1年ほどして突然目が見えなくなり、倒れてしまって。検査の結果、高血圧による眼底出血という診断でした。すぐに膠原病が疑われて、そのための治療をずいぶん長く受けましたが、後に原因は糸球体腎炎だとわかりました。最初から専門医にかかっていなかったことで、本当の病気を知るまでに時間がかかり、結果的に保存期が短くなってしまったのは、今でもとても残念だったと思っています。
 33歳で血液透析を導入し、週に3回透析に通うようになりました。透析は、毎回4時間をベッドの上で過ごします。よく読書をしていましたが、ある時『シーラという子』という本を読んだことが私のその後の 力を引き出そうと奮闘する教師の、実話に基づく話です。私は透析を始めて以来、どこかで「自分は社会のお荷物になっているのでは」という思いをずっと抱いていました。また一方で、自分にできる“何か”を、ずっと探し続けていました。そんな時にこの本と出合い、「身体を使うことは難しくても、自分の精神を尽くして誰かの役に立てられたら」と思ったのです。後に読んだ数冊からも影響を受けて、心理学への興味が日に日に強くなっていきました。
 心理学を学び、心理カウンセラーになることが、大きな目標になりました。すぐに「心理学を学べる大学を探そう」と思い立ちましたが、私は高校を中退していたのです。そこで、まずは透析を続けながら通える高校に入学して、卒業後は通信教育で通える大学を選び、40歳の時に入学しました。大学での学びは心から楽しく、毎日が充実していましたね。3年生の時、腎移植のお話があり、手術を受けることにしました。というのも、私は認定心理士の資格を取りたいと思っていて、そのためには時間が拘束される実験・実習の授業に出る必要がありました。透析に通っていては、受講が難しいと思っていたので、すぐに手術を受けると決めました。しかし、手術をした年に拒絶反応や感染症を起こし、移植腎を摘出することになりました。再透析になったことに、透析導入時よりも大きなショックを受け、無念な気持ちでいっぱいになりました。でも、その時に出会った移植コーディネーターの方が寄り添ってくださり、その姿勢は、「自分が目指すカウンセラー像」を描くきっかけになったのです。大学卒業後は産業カウンセラーの養成講座(半年)を受講し、2年後に産業カウンセラー資格を得て、協会主催の研修で出会った受講生仲間から声を掛けていただき、今の仕事をしています。また、「Oruka's room」という名前で、10年越しの夢であった個別カウンセリングも開始。さらに、全腎協でも定期的に「こころの電話相談」を担当しています。今の目標は、大学院へ進学すること。今でも仕事のかたわら勉強は必須ですが、やるならとことん突き詰めたいんです。何より、私は目標を次々見つけて実現させていくタイプ。そうして身に付けた知識やスキルを使って、必要としてくれるみなさんをサポートできたら、こんなにうれしいことはありません。

ページトップへ