透析医療と栄養を考える 第7回 リンを上手に減らす3つのポイント

3つのポイントをふまえて、リンの摂取を抑えましょう。

 食品には、肉や魚、卵などリンを多く含むものがあります。透析患者さんにとってこれらは、食べる量に気を付けなければいけない食品ですが、食事そのものを減らしてしまった場合、低栄養になってしまう恐れもあります。また、リンが多い食材はたんぱく質も豊富。たんぱく質は体をつくったり、体を動かすエネルギー源となる、人間にとって不可欠な成分です。
 元気を維持しながら、過剰となるリンを減らすためには、次の3つのポイントに注意することをおすすめします。

1 リンの少ない食品を選ぶ
2 調理を工夫してリンを減らす
3 食事の適正量を知る


 では具体的に、どのように気を付けると良いか、ご紹介していきましょう。

1. リンの少ない食品を選ぶ 同じ食品の中でも、リンの少ない商品を選びましょう。

ソーセージ・ウィンナー:たんばく質3gあたりのリン含有量

 調理や食事の際、成分量の参考として、食品成分表(日本食品標準成分表)を活用されている方も多いでしょう。しかし、ここで記されている数値は、あくまでも目安です。例えば同じソーセージでも、製造メーカーによって含まれている成分の値は異なります。食品成分表には、主な商品の平均値が記載されていると考えてください。カリウムや塩分なども同様ですが、メーカーが公表している栄養成分表示などを参考に、同じ食品でもリンの含有量が少ない商品を選ぶことが大切です。
 またリンには、本来食品に含まれている「有機リン」とは別に、「無機リン」があります。無機リンは保存や成型のための添加物として、特に加工品に多く含まれています。無機リンは腸管からの吸収率が高く、高リン血症に大きく関与するため、注意が必要です。しかし、各商品の栄養成分表示には、無機リンだけの含有量は記されていません。できるだけ食品添加物を使っていない商品を選ぶという視点は大切でしょう。
 さらに一つの目安として、ビールや清涼飲料水、滋養強壮剤といった飲料は、色が濃いものほどリン値が高い傾向があります。購入の際の参考にしてみてください。

2. 調理を工夫してリンを減らす 調理の際にひと手間加えて、食品のリンをカットしましょう。

ウインナー100gあたりの調理別リン含有量(実測)
インスタントラーメンのリン含有量(実測)

 同じ食品でも、調理法を工夫することでリンを減らすことができます。
 例えば、ウインナーはひき肉が羊の腸などに袋状に詰められているため、そのまま茹でてもリンはそれほど減りません。しかしウインナーを切って茹でると、その断面からリンが湯に溶け出すため、よりリンを減らすことができます。その際、茹で汁は飲まないようにしましょう。
 またインスタントラーメンも、麺にリンが使われていますが、麺の茹で汁は捨て、別に用意した湯でスープの素を溶くことにより、リンを抑えることができます。袋麺であれば、麺とスープを別々に調理することが可能ですが、カップ麺の場合は難しいため、できれば袋麺を選ぶと良いでしょう。さらに同じ麺類でも、うどんや素麺より、中華麺の方がリンを多く含んでいることも、覚えておくと良いと思います。
 和食に欠かせない出汁は、昆布やかつおをおすすめします。これらは煮過ぎると苦味が出るため、もともと長時間煮出すことがありません。おいしい出汁を取りながら、必要以上のリンを抑えることができます。一方、煮干し(いりこ)が粉末になった出汁パックは避けた方が良いでしょう。細かく加工されている分、リンが湯に溶け出しやすい上、煮干しは時間をかけて煮出すため、より多くのリンが溶け出すことになるのです。
 もちろん、鍋やシチューといった料理の場合、スープはあまり飲まないことも大切です。出汁の素材だけでなく、具材からもリンやカリウムが溶け出しているため、注意が必要です。この方法は、みそ汁にも応用できます。具だくさんのみそ汁に仕上げて、椀に盛る時に汁は少なくするのです。野菜などをたっぷり食べながら、スープに溶け出したリンやカリウムをカットし、さらには塩分と水分も抑えることができる方法です。
 このように、調理方法を少し工夫することでリンを少しずつ減らすことができます。

3. 食事の適正量を知る 食事摂取基準を目安に、しっかり食べましょう。

イメージ写真

 透析患者さんや腎臓に疾患のある方は、リンを極力制限しなければならないと考える方もいらっしゃいますが、そうではありません。「腎臓学会の食事療法基準」に基づいて、しっかりと食べることが大切です。
 健常者では、体重1kgあたり0.9gのたんぱく質の摂取が推奨されています。一方透析患者さんにおいては、標準体重1kgあたり1.0〜1.2gの量が目安とされます。これは透析によって失われるたんぱく質の量を補うという意味もありますが、決して低い数値ではないことがわかります。透析患者さんは、エネルギーのもとになる三大栄養素(炭水化物・たんぱく質・脂質)を健常者よりむしろ多く摂ることが推奨されています。
 では、なぜ摂取量について細かく配慮しなければならないかと言うと、栄養のバランスを考えずに食べると、リンの多い食品を重ねて摂ってしまう可能性があるからです。栄養摂取基準は「必要な栄養を、適量に、ちょうど良いバランスで」摂取するための目安ですが、実際の食事ではどうしても偏りがちです。リンはやはり注意するべき成分なので、偏って多く摂取することは避けることが大切なのです。
 とは言っても、食事は毎日のこと。会食や行事などで、どうしても食べすぎる時もあるでしょう。そんな場合は、「昼食を多めに食べたので夕食を控える」というように、1日単位で調整すれば大丈夫です。またリン吸着薬なども上手に活用しながら、しっかり食べて必要な栄養を摂り、食事を楽しみましょう。

下記は、食品に含まれるリンの含有量について、カテゴリー別に示したグラフです。食品選びの際に活用してください。

<卵・大豆製品・乳製品>たんぱく質3gあたりのリン含有量
<加工品・種実類>たんぱく質3gあたりのリン含有量
<肉類>食品80gあたりのリン含有量
<魚介類>食品80gあたりのリン含有量

市川 和子 先生

お話を伺った先生

川崎医科大学附属病院
市川 和子 先生

川崎医科大学附属病院 栄養部部長。腎臓疾患の患者や透析をされている方を中心に、栄養指導を実施。チーム医療の一員として、栄養面から患者をサポートされています。臨床透析や栄養ケアに関する著書も多数。

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