透析医療と栄養を考える 第8回 食事を楽しくしっかり食べる3つの工夫

まずは食材の特徴をきちんと知って、適切な量を食べましょう。

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 透析患者さんは、食事の際にリンやカリウム、食塩、水分など、配慮しなければならない成分があります。そのため、食事の量を控えたり、ご自宅で食事をする際にも場合によっては家族と同じメニューではなく、献立の内容を変えたり、調理の際に味付けを変えるといった工夫が必要です。
 食事は毎日のことなので、成分に気を付けながらも楽しんで食べることが大切です。神経質になりすぎたり、反対に成分量がわからないので最初から食べないといったことは、長期的に考えると精神面や栄養面において良いとは言えません。まずは、成分量など食品の正しい特徴をきちんと理解することが重要です。
 そのためには、食品の成分が簡単にわかるガイドブックがおすすめです。ミニサイズのものであれば鞄に入れて持ち運びがしやすいので、買い物や外食の際に、手軽に取り出せて便利です。書店やインターネットで購入することができるので、ぜひ活用してください。
 また、食品に含まれる成分の正しい知識を知るのと同時に重要なのが「透析食と通常の食事は何が違うのか」というポイントを知っておくことです。これを押さえておけば、気になる成分を「適切に減らす」だけでなく、メニューを簡単にアレンジしたり選択することができます。
 通常、私たちの食事は、単品というわけではありません。例えば昼食に牛丼を食べる場合、牛丼だけでなく他に和え物があったり汁物があったりします。「単品の料理」に対して、リンやカリウムなどをどれだけ減らすかといった工夫やレシピはよく見られますが、「一食分、さらには一日分」をトータルで考えて成分量を調整していくのは、とても難しいことです。そこで、ガイドブックを参考にしながら透析患者さんに合わせて、具や汁物の量を調整すれば、好きなものをおいしく食べることができます。

食品の成分が簡単にわかるガイドブックを活用しましょう!

1. 外食の時の「選ぶ工夫」

何をどれだけ食べられるかを知り、量を調整すれば、好きな料理を楽しめます。

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 食品の特徴を正しく知り、適切な量を食べる習慣は、特に外食やお弁当を選ぶ時などに役立ちます。
 例えば幕の内弁当や定食などの場合、ごはんの他にいろんなおかずがあり、すべてを食べるのは難しいかもしれません。そんな時、「何をどれだけ食べられるか」がわかっていれば、量を調整しながら好きなものを食べることができます。「このお弁当は、大体900kcalで、たんぱく質が25g、食塩が2.5g」という目安が立てられれば、「食塩が高いから、梅干と漬物を残そう。ソースも使わない」といった判断が可能です。また単品のメニューを組み合わせる場合なら、デザートは「果物だとカリウムが高いから、ゼリーにしておこう」という選択もできます。こうして食事のポイントをしっかり押さえておけば、エネルギー量を大きく変えずに、気になる成分だけを減らせます。ちなみにお弁当の場合、エネルギー量と価格は大体比例すると言われているので、こちらも目安にすると良いでしょう。
 また、メニュー選びの際にもう一つ参考になるのが、料理のジャンルです。和食でもっとも注意したいのは、やはり食塩です。中華料理も、八宝菜やマーボー豆腐といったあんかけ料理の場合、食品や調味料、水分があんでまとまってしまっているので、そのどれかを減らすことは難しく、おかずそのものの量を減らすことになります。しかし中華料理の良い点は、一人分ずつ皿に盛られていないので、知識があれば食材を選んだり量を工夫して食べられることです。「杏仁豆腐は食べるけれど、フルーツはやめておく」という選択をしながらも、食事を残した感覚も薄く、満足感があるのではないでしょうか。一方フランス料理やイタリア料理といった洋食の場合は、味が濃いというよりも香辛料が効いているので、食塩はそれほど高くないことが多いです。しかし、肉や魚、卵といったたんぱく源の食材が多く使われるので、その点には注意が必要です。
 こうして食品への知識があれば、入っている食材を見て、食べるものやその量を判断できます。また経験を重ねるうちに、少し食べてみるだけで、味付けの濃さがわかるようになるので、ますます上手に食事を選べるようになるでしょう。

和食・中華・洋食 料理のジャンル別 気をつけたいメニュー

2.  自宅で食事をする時の「調理の工夫」

「下準備」と「調味」の2段階で、気になる成分を減らして、おいしく食べましょう。

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 誰でも、好きな食材やメニューがあると思います。そこで、自宅で調理をする際は、「よく食べるもの」の特徴を患者さん本人や料理をする家族の方が知っておくと、分量を調整したり献立を考えるのがより簡単になります。例えばカレーの場合、ごはんにかけるルーを少なくしたり、肉類を入れる時もよりリンの少ない牛スジ肉を選ぶといった工夫ができます。レトルトのものを利用する時も、栄養成分表示を確認して、減塩のものを選ぶと良いでしょう。
 調理の際には、「下準備」と「調味」のそれぞれの段階で、工夫が必要です。「下準備」としては、まずリンやカリウムの少ない食品を選ぶことです。特に加工品には、食品添加物として無機リンが含まれており、栄養成分表示に記載されていないことも多いので留意しましょう。また、食材の下ごしらえを工夫することで、これらの成分を減らすこともできます。例えば野菜を一旦茹でこぼしてカリウムを減らしたり、インスタントラーメンは茹でた湯を捨てて新しい湯でスープを作れば、リンの値は低くなります。

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 次に「調味」の段階では、旨みを残しながら薄味に仕上げることが大切です。例えばみそ汁を作る際は、最初に旨みたっぷりの出汁を取って、みそを控えめに加えます。減塩のおいしいみそ汁を透析患者さん用に取り分け、さらに家族用にみそを足せば二種類の味のみそ汁が、一つの鍋でできて手軽です。料理は一旦調味料で味が付いてしまうと薄めることはできません。水を足しても出汁が薄くなりおいしくないので、味見をしながら少しずつ味を足していくのがおすすめです。

3. 欠食や低栄養を防ぐ「きちんと食べる工夫」

病院食や宅配食、デイサービスなど食事のサービスを上手に利用しましょう。

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 透析をしている患者さんの中でも、特に高齢の方は、1回の食事量が少なく低栄養になりがちです。また、時には欠食も問題になります。透析を朝に行っている方の場合、8時半や9時に開始しても、終わると正午を過ぎてしまいます。自宅に帰って準備をし、14時頃に食べ始めて15時に食事を終えたとすると、すぐに夕食の時間になります。1食が欠けたようになり、2食または2食半といった食事になりがちです。また、透析の日は横になっている時間が長く、体を動かすことが少ないので、あまり空腹を感じないこともあります。さらに、薬を多く飲んでいる方は、薬だけでおなかがいっぱいになるというケースもあります。
 欠食を防ぐためには、病院食や宅配食を上手に利用するのも一つの方法です。病院で用意している食事であれば、きちんと栄養管理がされているのはもちろん、透析後に病院ですぐに食べられるので欠食することはありません。また宅配食も、透析後の食事だけでなく、週に3回など定期的に利用すれば、料理の負担を減らすことができます。こうした病院食や宅配食の利用は、普段家族が料理を作ってくれる場合、家族の負担を軽くすることにもつながります。「毎食きちんと栄養管理をして料理をしなくては」と考え続けていると、精神的に疲れてしまい、料理をすること自体が苦痛になってしまう場合があります。1週間のうち2、3日だけでも曜日を決めてこうしたサービスを利用すると、少し息抜きができます。高齢者の方であれば、デイケアを活用するのも、良いでしょう。料理の負担を軽くするだけでなく、気分転換にもつながるはずです。

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常備菜やフリーズドライ食品、冷凍野菜が自宅での簡単調理に役立ちます。

 自宅で調理をする時でも、上手に手間を省いて、おいしく安心な食事を作るポイントがあります。例えば「常備菜」です。一般的なものよりも味を薄くする必要があるため、保存できる期間は短くなりますが、冷凍保存をすれば大丈夫です。
 また、最近スープやみそ汁の形態でよく見かけますが、「フリーズドライの食品」もおすすめです。1食分では多い場合も、半分に割って使うと便利です。同じ理由で、コンソメのようなブロックタイプの調味料や、鍋の素のように1食分ずつパッケージされている液体の調味料も、必要な分だけ使うことができます。さらにそれ単体で味が完成されているので、しょうゆやみりんを組み合わせるといった手間が必要なく、すばやく調理ができるのも魅力です。
 野菜では、サラダ用や炒め物用に「複数の野菜をカットして袋詰めにしているもの」も、手軽でしょう。また、「冷凍野菜」も便利です。かぼちゃや里芋、ブロッコリーなどいろんな野菜がありますが、これらは一度茹でてから冷凍しているので、カリウムが少ないのが特徴です。こうした商品をうまく活用して、料理や食事を楽しんでほしいと思います。
 それから、欠食や低栄養を気にしてサプリメントを利用する方もいらっしゃいますが、あまりおすすめはできません。サプリメントは栄養補助食品で、あくまでも食事で摂りきれなかった栄養を補うものです。まずは、しっかりと食事で栄養を補うようにしましょう。

欠食・低栄養を防ぐために上手に利用したいもの

市川 和子 先生

お話を伺った先生

川崎医科大学附属病院
市川 和子 先生

川崎医科大学附属病院 栄養部部長。腎臓疾患の患者や透析をされている方を中心に、栄養指導を実施。チーム医療の一員として、栄養面から患者をサポートされています。臨床透析や栄養ケアに関する著書も多数。

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