知っておきたい「リン」の話 vol.6 腎移植という選択 その2 移植の課題

慢性的に続くドナー不足

 当院では、腎不全の患者さんの選択肢には、血液透析、腹膜透析、腎移植の3つの選択肢がありますが、病院によっては、すべてを選択できるわけではありません。腎移植術の技術は飛躍的に進歩しましたが、依然として高度な医療であり、熟練したスタッフが必要です。また、内科医と移植を行う外科医とがそろい、連携することによってこそ可能となる治療です。腎移植を行うにはこれらの条件がそろっていなければならないので、受けられる病院には限りがあります。
 前回もお話ししたように、日本では慢性的にドナー不足が続いています。移植術の発達している欧米諸国と日本の違いはどこにあるかというと、欧米は日本に比べ献腎移植、つまり亡くなった方から腎臓が提供されることが多いので、多くの患者さんが移植を受けることができます。日本でも医療技術的には可能な献腎移植も、献腎の遺志をもって亡くなる方が少ないためになかなか行えないわけです。欧米では「死後は献体をして、自分の身体を病気の人に使ってもらうのは当たり前」という意識が根付いていますが、日本人には希薄。ドナー不足は制度の問題ではなく、死に対する考え方の違いから起こると言えそうです。

ドナー自身の意思が大切

 日本では献腎移植が少ない代わり、主に行われているのは生体腎移植です。患者さんの立場からすればメリットの大きい腎移植ですが、本来あくまでもドナーになる方の自らの意思で行われるべきものです。移植を受ける患者さんが、だれか周囲の人に「臓器を下さい」「ドナーになってほしい」と頼むのは倫理的に問題があると考えています。ましてや、医療者側から、家族の中でドナーがいないかと持ちかけたり、ドナーになることをためらう家族を非難するような雰囲気を作ってはならないと思います。

腎移植術の合併症

 ところで、腎移植はいつ行うのがよいのでしょうか。本誌読者の皆さんは透析患者さんかそのご家族ですから、透析開始後でも受けられるのかどうかが気になるところだと思います。結論から言えば、現在では透析開始前後どちらでも移植を受けることはできます。一方、本来どちらが望ましいのかについては、専門医の間でもまだ意見が分かれており、結論が出ていません。
 移植のためには、免疫抑制剤というお薬を使い、ドナーの腎臓に対する拒絶反応を起こりにくくします。そのために移植前後に感染症などの合併症が起こることがありますし、移植後はそれでも拒絶反応の症状が現れる可能性があるので、安定するまで4週間〜2か月間程度、入院治療を受けていただくことになります。生体腎移植の場合、ドナーもその半分程度の期間の入院が必要です。移植による合併症は人によりさまざまですが、移植直後に現れる場合もあれば、数年経ってから現れる場合もあります。
 健康な人の身体に傷をつけて臓器を提供していただく生体腎移植は、現時点ではメリットが大きい治療法ですが、いずれ将来的にiPS細胞を用いた再生臓器や、人工臓器の進化とともに消えていく、過渡期の治療法かも知れません。

監修者

お話を伺った先生

新潟大学医歯学総合病院
風間 順一郎 先生

医歯学総合病院 血液浄化療法部准教授。医学博士。腎臓疾患や透析に関する研究・治療に従事され、全国での講演も多数。東北地方太平洋沖地震では、被災された透析患者の受け入れに尽力されました。

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