知っておきたい「リン」の話 vol.7 透析導入後の〝うつ〟を考える

透析開始後の生活をイメージしておきましょう

 人工透析の開始直後から半年〜1年程度は、透析という現実が受け入れられず、うつ状態になる患者さんが少なくありません。特に、保存期腎不全(人工透析導入前)の食事療法に真剣に取り組み、頑張ってきた患者さんほど、「あれだけ頑張ってきたのに…」というある種の敗北感から、激しく気落ちしてしまいます。
 保存期の治療の多くは、透析開始を遅らせることを目標に行われます。しかし、どんなに自分に厳しく頑張っていても、いずれは人工透析を必要とすることがほとんどです。透析開始と聞いて「いよいよ人生の終わりか…」と嘆く方も多いのですが、現在ではほとんどの患者さんは保存期よりも長い期間、人工透析を受けながら生活しています。透析は、「人生の終わり」でも「敗北」でもなく、新たに始まる治療と考えてください。保存期のうちから透析治療開始後のライフプランをイメージしておけば、心の準備もできます。

旅行も、仕事も…人生を楽しんで

イメージ 最も一般的な「血液透析」の場合、週に3 回、毎回数時間病院で過ごします。通院時間が増えるだけでなく、生活上のさまざまな制限が増え、好きなことができなくなると考えてしまうことが 〝うつ〟の一つの原因です。もちろん、「水分をとりすぎない」「予定通りに透析を受ける」などいくつかの約束事はありますが、患者さん自身の生活や、やりたいことがむやみに制限されることはありません。透析を受けているからといって「あれもこれもやれなくなる」ということはないのです。
 旅行の好きな人は旅行先の施設で透析を受けることができますし、夜間透析を行っている病院もあるので、仕事も十分に続けられます。働きながら人工透析を続けることに対する社会的な認知も高くなり、働きたい人への門戸は開かれています。

透析導入後ならではのメリットもあります

 また、保存期に比べるとむしろ患者さんにとって良い点もあります。気になる症状などがあっても、週3回の通院のたびに相談できるので、細かくケアしてもらえるということは透析開始のメリットでしょう。必要な時にはリン吸着薬などのお薬を使いながら、毎日の食事を楽しんで生活していただきたいと思います。
 透析直後のうつを治す最良の薬は「時間」。時間が経つと、患者さん自らが透析を受け入れることができるようになります。透析を受けながらもできることやメリットにも目を向け、前向きな気持ちで過ごせるようになるのです。誰でも開始直後は透析で頭がいっぱいなものですが、だんだん存在が小さくなっていき、透析が「自分の人生のひとつのパーツでしかない」と考えられるようになったら、うつ状態は一段落です。
イメージ 透析患者さんの人生は透析のためにあるわけではありません。人生の可能性を自ら狭めてしまうことなく、むしろ、やりたいことを実現するために透析と向き合っていくことを、私たちも応援しています。

風間 順一郎 先生

お話を伺った先生

新潟大学医歯学総合病院
風間 順一郎 先生

医歯学総合病院 血液浄化療法部准教授。医学博士。腎臓疾患や透析に関する研究・治療に従事され、全国での講演も多数。東北地方太平洋沖地震では、被災された透析患者の受け入れに尽力されました。

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