知っておきたい「リン」の話 vol.9 知っておきたい 転倒予防

透析患者さんは特に「転倒」に注意

 透析患者さんに限らず、日本の高齢者が要介護状態になる原因で最も多いのは「脳卒中」と「認知症」。どちらも約2割と互角ですが、それにつづいて3位を「転倒」がしめています。特に大腿骨の骨折は回復に時間がかかり、寝たきりになりやすいものです。透析患者さんの場合、腎臓の機能が低下しているために骨が弱くなりやすいので、特に転倒に注意したいものです。
 最近では、透析中の時間を有効活用しようということで、ベッドの上でできる筋力トレーニングを勧める医療機関が増えてきました。筋肉は転びそうになった体を支え、骨を骨折から守るクッションの役目も果たしています。しかし、筋肉量は年齢とともに減少しやすく、特に大腿筋は30歳から70歳までの40年間で、太ももの前側は2分の1、後ろ側は3分の2まで減ってしまいます。したがって、筋力を維持するトレーニングはとても大切ですが、転倒を防ぐためには、その他にもぜひ知っておいていただきたいポイントがあります。

転倒予防のポイントは「注意力」「調整力」「筋力」

 高齢者の転倒を防ぐポイントは3つあります。第1に「注意力」。高齢になると周囲への注意力が散漫になり、小さな段差や床に置かれたものに気づきにくくなります。これはトレーニングでは養えませんので、ご家族など周囲の人の「配慮」が必要です。転倒事故が最も起きやすいのは自宅の中ですので、床に置いてあるものを減らす、段差をなくすなど、危険の芽をつむことが大切です。
 第2は「調整力」です。調整力とは体の平衡を保つバランス感覚のことで、こちらは立って行うトレーニングで高めることができます。安全に注意しながら、手すりにつかまって片足立ちをする、無理のない範囲で腰を落とす(ハーフスクワット)などの運動をゆっくり行ってみてください(※イラスト参照)。
 そして、第3に「筋力」です。これは先に述べたように、透析中にもトレーニングすることができます。また、先ほどのハーフスクワットは大腿筋を鍛える効果もあります。
【片足立ち】【スクワット】

激しい発汗を伴う運動には注意を

image 透析患者さんの中には、激しい競技スポーツを好む方もいらっしゃいます。もちろんスポーツを楽しむことはいけないことではないのですが、急な発汗は血中のカリウム値が上昇し、普段はそれほど高くない方であっても高カリウム血症を起こす恐れがあります。暑い季節は、熱中症予防が話題になりますが、透析患者さんの場合、体温が上がる前に高カリウム血症が起こりやすくなります。同じ理由で、サウナ風呂でたっぷり汗をかくのも危険。透析患者さんの中には、除水量を減らすためにサウナに行く方がいらっしゃいますが、高カリウム血症で前触れなく意識を失うという危険な事故につながりかねません。
 透析患者さんにとって汗をかく運動は、健康な人に比べてリスクがあることを理解して、無理のない範囲で運動を楽しんでいただきたいと思います。

風間 順一郎 先生

お話を伺った先生

新潟大学医歯学総合病院
風間 順一郎 先生

医歯学総合病院 血液浄化療法部准教授。医学博士。腎臓疾患や透析に関する研究・治療に従事され、全国での講演も多数。東北地方太平洋沖地震では、被災された透析患者の受け入れに尽力されました。

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