歴史の息吹を 感じる美しい町並み
城下町 萩・津和野をたずねて

掲載:2015年 vol.19

城下町 萩・津 和野をたずねて

江戸時代に栄え、今も当時のたたずまいを残す「萩・津和野」。
萩は、今年のNHK大河ドラマ「花燃ゆ」の舞台としても、注目を浴びています。
今回は、歴史を感じさせる二つの城下町を中心に、さらに西へ足をのばした先に広がる、風光明媚な日本海の景色をご紹介しましょう。

萩の名士・吉田松陰と、
幕末志士の足跡をたどる。

 北は日本海に面し、三方を山に囲まれた自然あふれる穏やかな町「萩」。江戸時代、萩藩・毛利氏が治める、36万石の城下町として栄えました。
 この時代に萩が生んだ名士と言えば、武士であり教育者であった吉田松陰でしょう。松陰は、1830(天保元)年に萩藩士の家に生まれ、叔父である玉木文之進が開いた私塾「松下村塾」で学びます。九州での遊学の後、江戸に出て思想家・佐久間象山に出会い、師事。二人は特に兵学や西洋の学問に関心が高く、松陰は1854(嘉永7)年に来航したペリー艦隊に密航を計画し、象山もこれに関係したと言われています。松陰はこの一件で萩へ送還され幽閉されますが、1855(安政2)年の出獄後、叔父の松下村塾を引き継いで主宰。ここで高杉晋作や伊藤博文といった、後に幕末維新に活躍する人物を多く輩出します。志士たちは松陰の死後もその教えを受け継ぎ、坂本龍馬の仲介を得ながら、薩摩藩と薩長同盟を締結。後に幕府を倒す原動力になっていったのです。
 さて、幕末の志士たちを育んだ松下村塾は、今も現存しています。吉田松陰を祭神とする松陰神社の敷地内に建ち、現在では国指定史跡にも指定。同じく境内の宝物殿・至誠館や吉田松陰歴史館もめぐれば、激動の日本を牽引した風雲児たちが抱き続けた、熱い志が感じられるでしょう。

松下村塾

松下村塾
吉田松陰の叔父・玉木文之進が開設した私塾。
松陰も若い頃に学び、後に引き継いだ。国指定史跡として登録され、外からのみ内部を見学することができる。

歴史ある町並みや邸宅が語り継ぐ、
豊かな文化と往時の繁栄。

 萩の町は、1604(慶長9)年に萩藩祖・毛利輝元が日本海に張り出した指月山の麓に萩城(別名・指月城)を築城したことで、大いに栄えます。36万石を有し、その後約260年もの間、城下町として発展しました。当時の町並みは今もその姿をとどめ、武家屋敷や豪商の屋敷などが多く残っています。
 市街地の南東に位置する藍場川周辺もその一つです。藍場川は松本川と市街地を結ぶ川で、もともと用水路として整備されました。名前の由来は、かつてこの川の下流に藍玉(藍の葉を原料にした染料を固めたもの)を作る藍場ができ、川の水が藍色に染まったことによるそうです。藍場川の最上流には、旧湯川家屋敷があります。当主は川の水位の管理などを行う藩士でした。屋敷の見どころは、川の水を引き込んだ流水式池泉庭園。また、その水を利用した独自の造りの台所なども残されており、豊かな水に恵まれた当時の生活をうかがい知ることができます。
 菊屋家住宅も、往時の面影を残す邸宅の一つです。萩藩御用達であった豪商・菊屋家の屋敷で、1604(慶長9)年、毛利輝元の萩入国に従い、現在の場所に居を構えたと言われています。敷地は約2000坪あり、その内およそ3分の1を一般公開。中でも主屋・本蔵・金蔵・米蔵・釜場の5棟は、国の重要文化財に指定されています。特に主屋は江戸初期に建てられたもので、現存する町屋の中では日本最古級という大変希少価値の高い建物です。
 菊屋家住宅の西側にのびる道は「菊屋横町」と呼ばれ、美しい白塗りのなまこ壁が続き、「日本の道百選」にも選定されています。近くには、旧久保田家住宅や高杉晋作誕生地があり、古い町並みをゆったりと散策してみるのもおすすめです。

菊屋横町

菊屋横町
1604(慶長9)年に建てられた豪商・菊屋家の邸宅を中心に、屋敷の西側にのびる通り「菊屋横町」。

旧湯川家屋敷

旧湯川家屋敷
藍場川の最上流に、今も当時の姿を残す武家屋敷。川にかかる石橋を渡って門をくぐれば、美しい庭園が広がる。

藍場川の鯉
旧湯川家屋敷の台所のハトバ

藍場川では、色とりどりの鯉が泳ぐ様子を眺められる。近くでは鯉のエサも販売している。(写真上)
旧湯川家屋敷の台所のハトバ。川の水を引き込んで利用されていた。(写真下)

市街地で自然が満喫できる、
萩ならではの魅力を味わって。

 菊屋横町から北西へ約1キロ進むと、萩城跡があります。現在は石垣と堀の一部を残すのみですが、「指月公園」として地元の憩いの場となっている他、春には桜が見事に咲き誇ります。
 この萩城跡の横に架かる指月橋の近くからは、「萩八景遊覧船」の乗船が楽しめます。乗船時間は約40分。堀内の伝建地区(重要伝統的建造物群保存地区)を眺めながら橋本川に入り、常盤島の横を通って松並木をくぐります。
 さらに萩城の外堀へと続く新堀川へ進むと、平安古松原や平安古伝建地区の旧田中別邸があります。そして最後に萩八景のひとつである玉江の美しい景観をのぞむ、萩の水辺の情景を満喫できるコースです。桜の開花時期には、特別に期間限定で「桜鑑賞コース」を運航。時間を20分延長して橋本川の土手を彩る美しい桜並木を船上から眺めることもできます。
 さて、萩城跡の近くには、もう一つの名所となっている水辺があります。それは萩湾に沿って浜崎商港まで続く白砂青松の海岸「菊ヶ浜」です。浜は「快水浴場百選」に、夕景は「日本の夕陽百選」にも選ばれています。砂浜からは国指定天然記念物の「指月山」、沖合には笠山や多くの島々を眺めることができ、四季を通して絶景が楽しめます。

萩八景遊覧船

萩八景遊覧船
萩城跡の横にある指月橋の乗り場を発着し、水の都・萩の魅力を満喫できる。

菊ヶ浜の夕景

菊ヶ浜の夕景

ページトップへ