北の港町
函館・浪漫旅

掲載:2016年 vol.26

八幡坂

2016年3月26日、北海道新幹線が開業し、北海道から九州までが新幹線で一つにつながりました。
それから約半年、今も注目を集める「函館」。
今回は、この旅情あふれる北の港町の魅力をたっぷりご紹介します。

八幡坂
八幡坂から見下ろす函館港。函館は坂が多い街としても有名で、それぞれの通りによって表情豊かな景色が楽しめる。

穏やかな天然の良港を抱え、江戸時代から発展を続けた函館。

 北海道の南端。内浦湾を抱き込むように西から南へと曲がる渡島半島の南東部に位置する「函館」。その名の由来は、室町時代に津軽の豪族・河野政通が宇須岸(うすけし)(かつての函館港一帯)に築いた館の形が箱に似ていたことからこの地域が「箱館」と呼ばれるようになったことによります。その後1869(明治2)年に「函館」と改称されました。
 津軽海峡に面した岬によって形成された函館港は天然の良港で、1859(安政6)年に横浜港・長崎港とともに国内初の貿易港として開港。北海道と本州を結ぶ交通の要衝、また北洋漁業の基地港としても発展しました。さらに同年、それまで入港していたものの交易がなかった外国船との貿易を開始。箱館奉行は外国人居留地の整備も進めました。その場所は現在、「金森赤レンガ倉庫」と呼ばれる観光名所となり、その名の通り、レトロな赤レンガの倉庫が建ち並んでいます。これは明治時代に大分出身の実業家・渡邉熊四郎氏が開業した「金森洋物店」が発祥で、今はレストランやショッピングモールなどが入っています。この地域一帯は重要伝統的建造物群保存地区に、街並みは北海道遺産に選定されています。
 函館港には他にも、1988(昭和63)年まで函館 青森間で運行されていた国鉄青函連絡船の摩周丸が記念館として係留されており、近代の歴史を知る貴重な資料を見ることができます。

地図 金森赤レンガ倉庫

金森赤レンガ倉庫
函館湾に面したウォーターフロントに建ち並ぶ金森赤レンガ倉庫。商業施設や展示ホールが入っている他、一部は今も倉庫として使用されている。

函館港

函館港
函館港は、常に波が穏やかで船をつなぐ必要もないため、「綱知らずの港」ともいわれていた。

色づく秋の元町 レトロな路面電車が走る街。歴史の重みを感じる建築も魅力。

 函館は、外国との交易が盛んであったことから、今も異国情緒あふれる建築物が多く残されています。
 「旧函館区公会堂」は、北海道の豪商で政治家でもあった相馬哲平氏が建築したコロニアルスタイルの西洋館。1907(明治40)年の大火で町会所が焼失した際、寄付を申し出て3年後に完成しました。木造2階建ての擬洋風建築で、現在は国の重要文化財に指定されています。ブルーグレーと黄色の外装はもちろん、桟瓦葺きの屋根や、玄関・回廊の柱の装飾など、壮麗で美しい姿が魅力です。
 歴史ある教会が多いのも函館の特徴です。「函館ハリストス正教会」は、1860(万延元)年にロシア正教の教会として建立されました。ロシア領事館付けの小さな仮聖堂として始まり、こちらも国の重要文化財です。白亜の外壁と淡い緑色の屋根が美しい、ロシアのビザンチン様式の教会で、聖堂のイコン(聖像画)と豪華なシャンデリアは圧巻です。
 赤い屋根が印象的なゴシック建築の建物が「カトリック元町教会」です。横浜・長崎のカトリック教会と並び、国内で最も古い歴史があります。パリ外国宣教会の司祭メルメ・カションが1859(安政6)年に設立した仮聖堂、または1867(慶応3)年に来函したフランス人の司祭ムニクウとアンブルステルが設けた仮聖堂を起源とし、フランス人司祭のマレンが1877(明治10)年に初代聖堂を建立したとされています。聖堂内の中央祭壇や副祭壇、聖画などは、ローマ教皇ベネディクト15世から贈られたもの。ステンドグラスやレリーフなどの装飾も細部にわたり美しく重厚で、荘厳な空間に心が洗われるようです。

カトリック元町教会

カトリック元町教会
函館・元町を代表する3教会のひとつ。鐘楼の先端に留まる雄鶏は、教会を守る意味があるといわれている。

旧函館区公会堂
旧函館区公会堂
旧函館区公会堂

旧函館区公会堂
コンサートやイベントなどが開催され、今も地元の人々が集まる他、観光客には優雅でレトロな衣装を着て撮影ができるサービスも人気。

函館市電(箱館ハイカラ號)

函館市電(箱館ハイカラ號)
函館には市電(路面電車)が走っており、観光に便利。車両はレトロなものから近代的なものまで、さまざまなデザインがある。写真は、函館市制70周年記念事業のひとつとして復元された「箱館ハイカラ號」。

函館ハリストス正教会

函館ハリストス正教会
日本正教会の中でも、伝道の最初期からの歴史を持つ最古の教会のひとつ。1907(明治40)年の函館大火で全焼するが1916(大正5)年に再建。美しい鐘の音は「日本の音風景100選」に選ばれている。

函館市街と津軽海峡に灯る、趣ある美しいあかりを眺めて。

函館ハリストス正教会

 函館港から函館の市街地の西方を見上げると、函館山がのぞめます。牛が寝そべっているように見えることから「臥牛山(がぎゅうざん)」とも呼ばれています。
 実は函館山とは、展望台のある御殿山をはじめ、薬師山、つつじ山、汐見山といった13の山々の総称です。函館山では、1898(明治31)年から要塞建築が始まり、その後砲台や発電所、観測所など17の施設が建築されました。山全体が要塞地帯になり、地形図から函館山が消えた時期もあります。1945(昭和20)年の第二次世界大戦の終結により、翌年末には再び市民に開放されました。約半世紀にわたって一般人の立ち入りが禁止されてきたため、山の自然は守られ、今は絶滅寸前といわれている生物(アズマヒキガエルなど)も生息しています。
 1948(昭和23)年、函館市はこの一帯を都市計画法に基づいて「函館山緑地」としました。御殿山の山頂に展望台が設置される他、函館山ロープウェイや一般道、登山道などを整備し、夜景の名所としても全国的に有名になりました。陸繋島のくびれた形の市街地に輝く街灯りと、海の漆黒のコントラストは大変美しく、その眺望はミシュラングリーンガイドジャポン(改訂第2版)で三ツ星として掲載されています。またイカ釣り漁が盛んな時期には、漁船が灯すランプ(集魚灯)が闇に点々と灯り、幻想的な景色が楽しめます。

函館山ロープウェイ

函館山ロープウェイ
函館山の山麓と山頂を結ぶロープウェイ。よく晴れた日の昼間には、函館市街はもちろん、津軽海峡を挟んで下北半島まで見渡すこともできる。

夜の海に浮かぶ漁火

夜の海に浮かぶ漁火
夏から秋にかけ、津軽海峡で行われるイカ釣り漁で、漁船がともす「漁火(いさりび)」。その幻想的な風景は、函館の風物詩として人気が高い。

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