心も体もあったまる
湯のまち・大分

掲載:2017年 vol.27

別府の街から勢いよく立ち上る湯けむり

新しい年を迎え、ますます寒さ厳しい季節。
今回は、冬ならではのお楽しみである「温泉」についての、“日本一”を多く有する大分県をご紹介。
特色ある温泉もたくさん。ぜひそれぞれの魅力を味わってください。

別府の街から勢いよく立ち上る湯けむり。文化的な価値を持つ地域の営みに根ざした景観として、2012年に「別府の湯けむり・温泉地景観」が重要文化的景観に選定された。

温泉の源泉数、湧出量、地熱発電量で日本一を誇る大分県。

 寒い季節に人気の温泉。世界的に見ても、日本は多数の温泉を有する「温泉大国」であり、そのため日本人は古くから温泉や湯船に「浸かる」という入浴習慣を持っていました。
 中でも「日本一のおんせん県おおいた」と称し、全国的に広く知られているのが大分県です。温泉の源泉数(4381か所)、湧出量(278934リットル/分)、さらに地熱発電量は、ともに日本一。この豊かな温泉の恵みは、栽培や養殖などの産業、食文化、美容、医療に至るまで幅広く活かされています。
 温泉特有の硫黄の香りが漂う別府は、大分を代表する温泉地です。通称「別府八湯」と呼ばれる8か所の温泉郷を中心に市内各所で温泉が湧き出しています。江戸時代後期までは農閑期を中心に周辺から湯治客を集めていましたが、明治に入り、別府港の築港や交通の整備により観光客が増加しました。現代でも、「国際観光温泉文化都市」に指定され、国内外から多くの人が訪れます。
 一方で、住民の暮らしにおいても温泉は大変身近な存在です。市内には100か所を超える共同湯があり、ほとんどの施設は一回数百円で入浴ができます。温泉街の路地を入ると、通りのあちらこちらから湯気が出ている様子も別府ならでは。特に冬は立ち上る湯けむりがいっそう白く、町全体を見渡す遠くからの眺めは圧巻でありつつどこか心が和みます。

地図 大通りから奥へ入った路地
大通りから奥へ入った路地

大通りから奥へ入った路地。商店が並ぶ通りや、住居のすぐ横でも温泉の蒸気が上がる。別府が「泉都」と呼ばれるのも納得の、豊富な湯量を思わせる。

楽しみ方はいろいろ!別府八湯

別府温泉の中心を構成している「別府八湯」。
別府・鉄輪・観海寺・明礬・亀川・柴石・堀田・浜脇と呼ばれる8つの温泉郷で、それぞれ異なる特徴があります。
市街地から、野趣あふれる自然の中にある温泉まで、多様な楽しみ方ができるのも魅力です。

別府温泉

別府温泉
江戸時代に脚光を浴び、明治時代に発展、大正・昭和時代には温泉施設や宿が増えたことで、別府八湯の中心となりました。中でも竹瓦温泉は有名で、現在の建物は1938年に建築。正面は唐破風造(からはふづくり)の豪華な屋根で、天井の高いロビーは昭和初期のイメージを残したくつろぎのスペースになっています。温泉の他、砂湯も人気です。

鉄輪(かんなわ)温泉

鉄輪(かんなわ)温泉
おびただしい湯煙が立ち上り、八湯の中で最も温泉場らしく感じられます。鎌倉時代「玖倍理湯の井」といわれた荒地獄を一遍上人が開発。その一遍上人創設の「むし湯」付近が、現在の鉄輪の中心地です。細い道の両側には多くの共同浴場や旅館、土産品店が並んでいます。

観海寺(かんかいじ)温泉

観海寺(かんかいじ)温泉
海抜150メートルの大変見晴らしが良い温泉地で、江戸時代の地誌『豊後国志』には「観海寺に行くには交通は極めて不便だが、景勝は壮観なので浴客が盛んに訪れている」とあります。地熱の利用が盛んで、照明や暖房などに活用している宿もあります。

明礬(みょうばん)温泉

明礬(みょうばん)温泉
江戸時代、明礬の採取地で質量とも全国一になり、採取事業の隆盛とともに湯治場として発展しました。藁葺きの「湯の花小屋」から白い噴煙が立ち上る様子が印象的。名産の「湯の花」とともにザボン湯も有名です。

亀川(かめがわ)温泉

亀川(かめがわ)温泉
海岸に豊富な温泉が湧出しており、天然砂湯は江戸時代から名物でした。その頃は「別府の北の玄関口」として豊前小倉への交通の要衝でもあったため、旅人の疲れを癒す湯治場としても栄えたといいます。現在は、上人ヶ浜公園の一角に市営の別府海浜砂湯があり、周辺には温泉を活用した病院や療養施設、保養所が多数あります。

柴石(しばせき)温泉

柴石(しばせき)温泉
江戸時代に柴の化石が見つかり、「柴石」と呼ばれるようになったという由来を持つ温泉。895年に醍醐天皇が、1044年には後冷泉天皇が病気治療のため湯治に訪れたと伝えられています。美しい自然景観を楽しめる森林遊歩道を有し、鉄輪・明礬と共に国民温泉保養地に指定されています。

浜脇(はまわき)温泉

浜脇(はまわき)温泉
別府温泉発祥の地で、浜から温泉が湧き出る様子から「浜わき」の地名が生まれました。鎌倉初期には朝見八幡が創立され、江戸時代には港町・温泉町・門前町として陸海交通の要衝となったことで急速に発展。今でも昔の面影を残す旅館が並び、明治・大正時代の花街の名残もとどめています。

堀田(ほりた)温泉

堀田(ほりた)温泉
湯治場として江戸時代に開かれ、その頃に「立石の湯」から堀田温泉と呼ばれるようになりました。豊富な湯量に恵まれ、湯布院や日田、太宰府等へ通じる交通の要衝であったため、長旅の疲れを癒す旅人たちの憩いの場として栄えました。今でも田んぼや谷あいから盛んに硫気が噴き出し、市内にも給湯されています。

新しくて懐かしい? 珍しい温泉をたどる べっぷ地獄めぐり

 地獄めぐりには、含有物によって赤や青、白などさまざまな色を持つ温泉や、間欠泉など、特色のある源泉が点在しています。これらは千年以上も昔より噴気・熱泥・熱湯などが噴出し、近寄ることもできない忌み嫌われた土地であったといわれています。そのことから、「地獄」と称されるようになり、今も鉄輪では温泉噴出口を「地獄」と呼んでいます。現在は「別府地獄組合」があり、加入している7つの源泉(地獄)をめぐるルートは、観光コースにもなっています。

べっぷ地獄めぐり地図

海地獄 国指定名勝
1200年ほど前に、鶴見岳の爆発によって誕生したとされています。硫酸鉄によるコバルトブルーの涼しげな色をしていますが、その温度は98度。隣接した池では温泉水でオオオニバスが栽培されており、大きく育った葉の上に子どもが乗るイベントも開催されます。

血の池地獄 国指定名勝
『豊後国風土記』『万葉集』にも「赤湯泉」などとして記されている、日本最古の天然地獄。泉温は78度。ここから産出する赤い粘土で、皮膚病に効くとされる「血の池軟膏」が作られています。

龍巻(たつまき)地獄 国指定名勝
別府市指定天然記念物の間欠泉(一定の周期で水蒸気や熱湯を噴出する温泉)。世界の間欠泉の中でも休止時間が短く、約30〜40分間隔で噴出します。※時間は降水量によって変化するといわれています。

鬼石坊主(おにいしぼうず)地獄
灰色の熱泥が大小の球状をなして沸騰する様子が坊主頭に似ていることと、鬼石という地名から名付けられました。泉温約99度のナトリウム塩化物泉です。

かまど地獄
古くは氏神・竃門(かまど)八幡宮の大祭において、この地獄の噴気で炊いた御飯を神前に供える習わしがあったことから名付けられました。猛烈な噴気とともに、高熱温泉を出しています。

白池(しらいけ)地獄 国指定名勝
泉温95度のホウ酸食塩泉。噴出する時は無色透明の熱湯ですが、池に落ちると温度や圧力の低下によって自然に青白色になってきます。園内では、温泉の熱を利用して各種の大型熱帯魚を飼育しています。

鬼山地獄
鬼山という地名に由来し、別名「ワニ地獄」の名で親しまれている源泉。1923年に日本で初めて温泉熱を利用したワニの飼育を始め、現在は約70頭のワニを飼育しています。

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