掲載:2018年 vol.31
富士の夜明けと雲海
夜明け前から早朝にかけ、いくつかの気象条件が揃った時に現れる雲海。富士山周辺でも見られる現象で、日の出とともに見渡す風景は格別。
高3776.12メートルを誇る日本最高峰の独立峰・富士山。その優美な姿からも古来より人々の崇拝を受けてきた霊峰で、山岳信仰の一つである「富士信仰」が生まれました。
山岳信仰とは自然崇拝の一種で、山岳と関係の深い人々が抱く、自然の雄大さや厳しさへの畏敬の念から発展した宗教形態だと言われています。山間に暮らす人々は、さまざまな恵みをもたらしてくれる自然に感謝を込めて祈る一方で、険しい山の環境において命が危険な状況になり得る行為を信仰上の禁忌として語り継いできました。神や御霊が宿る、または降臨する聖なる場所とされた山は信仰の対象となり、富士山でも浅間大神(あさまのおおかみ)と木花咲耶姫命(このはなのさくやひめのみこと)を主祭神とする「浅間信仰」や修験道の一つ「村山修験」などが生まれました。
日本人が神聖視してきた富士山は、文学や美術の題材としても大いに好まれました。その影響もあり、時代とともに「日本の象徴」として海外でも広く知られ、今日まで親しまれています。
士信仰に基づき、富士山を神格化した浅間大神(あさまのおおかみ)、または神話に現れる木花咲耶姫命(このはなのさくやひめのみこと)を浅間大神とみて祀るのが、浅間神社です。浅間神社は全国に1,300社あり、その総本宮は静岡県富士宮市にある富士山本宮浅間(せんげん)大社。2013年には「富士山 信仰の対象と芸術の源泉」の構成資産の一つとしてユネスコの世界文化遺産に登録されました。
創建は垂仁天皇3年(前27年)まで遡ります。富士山の大噴火によって周辺住民が離散し、荒れ果てた時期が長く続いたことから、同天皇が浅間大神を山足の地に祀り山霊を鎮めたことに由来しています。その後、時代を経る中で朝廷や武家による手厚い保護と、庶民の信仰を集め、駿河国一之宮として東海の名社となりました。
くから三島の地に鎮座し、奈良時代や平安時代の古書にも記されている三嶋大社。山森農産の守護神である大山祇命(おおやまつみのみこと)と、俗に恵比寿様とも称される福徳の神・積羽八重事代主神(つみはやえことしろぬしのかみ)の二柱の神を総じて三嶋大明神(みしまだいみょうじん)と称し、祀っています。また社名・神名の「三嶋」は、地名の由来ともなっています。
中世以降、武士、中でも伊豆に流された源頼朝が深く崇敬し、源氏再興や挙兵に際し戦捷を祈願。御園・河原谷の寄進などを行いました。その後、戦国時代には当時の三島を治めた後北条氏、江戸時代には幕府の保護を受けてきました。近年はその文化的価値の高さから、2000(平成12)年に本殿が重要文化財に指定されています。
岡市駿河区の久野山に佇むあでやかな久能山東照宮。1616(元和2)年、徳川家康が死去した際にその遺命によってこの地に埋葬され、2代目将軍・秀忠によって現在の久能山東照宮の社殿が造営されました。また3代目将軍・家光の時代には、日光東照宮の造営とともにこの久能山東照宮の整備も行われ、五重塔※などが増築されるほか、本社銅瓦への葺き替えや宝塔の建て替えが行われました。権現造、総漆塗、極彩色の御社殿は、彫刻や模様、組物等に桃山時代の技法を取り入れた江戸初期の代表的建造物として、2010(平成22)年には国宝に指定されています。敷地内には、久能山東照宮に伝わる宝物を保存・管理する久能山東照宮博物館もあり、徳川家康公、ならびに徳川歴代将軍にまつわる名品が展示されています。
※五重塔は明治時代の神仏分離により解体され、現在は残っていません。
大な南アルプスの麓にある寸又峡(すまたきょう)。ここを流れる寸又川を堰き止めて造った大間ダムに架かる吊り橋が「夢の吊り橋」です。全長90メートル、高さ8メートル。豊かに水をたたえたエメラルドグリーンの湖面に浮かぶ橋がとても幻想的で、夢に見るほど美しいことから、この名前が付いたともいわれています。定員はなんと10名。大人数で一度に渡ったり、大きく揺らしたりすると危険です。この橋が人気を集めるのは、その神秘的な風景に加え、恋愛成就の言い伝えも理由の一つ。また、夢の吊り橋につながる遊歩道はハイキングコースとなっているほか、その入り口には“美人の湯”として知られる寸又峡温泉があることからも、女性を中心に、季節を問わず多くの人が訪れます。
200メートル、高さ20メートルの崖から、繊細な絹糸を垂らしたように流れる「白糸の滝」。その優美な滝の姿に、源頼朝は「この上に いかなる姫や おはすらん おだまき流す 白糸の滝」という歌を詠みました。
1936(昭和11)年と早くから国の名勝および天然記念物に指定されるほか、1990(平成2)年には「日本の滝百選」に選定。2013(平成25)年には「富士山 信仰の対象と芸術の源泉」の構成資産の一つとして、世界文化遺産に登録されています。滝壺へ渡る「滝見橋」から眺める景色も素晴らしく、天気に恵まれた日には虹が架かりさらに神々しい雰囲気が漂います。
く海に面した静岡には、自然の力強さを体感できる海のスポットもたくさんあります。その一つが「天窓洞」です。凝灰岩でできた洞窟で、波によって浸食され東・西・南の3ヵ所の入口ができ、さらに中央の天井が丸く抜け落ちています。そのためまさに天窓のように天井から光が差し込み、水面を照らします。季節や時間、天候によって水の色がさまざまに変化する様子は大変美しく、1935(昭和10)年には国の天然記念物に指定されました。
「龍宮窟」も同じく波によって削られてできた海食洞で、天窓が直径50メートルと、伊豆で最大級の大きさです。龍宮窟を見下ろす遊歩道が整備されており、天窓の上から中をのぞくとハートの形に見えることからも人気を集めています。
いずれも、伊豆の洞窟をめぐるクルージングで海から訪れることができ、雄大な景色を楽しめます。
L.JP.MKT.CN.12.2017.3370